仮想通貨のUSDCとは?基本概要や他のステーブルコインとの違いを解説

USDCとは
目次

USDCとは?基本概要

USDC(USD Coin)とは、米ドルに価値を連動させることを目的としたステーブルコインです。

Circle Internet Financial, LLC と Coinbase が共同で開発しています。

Circle Internet Financial, LLC は 2013 年創業のフィンテック企業で、Coinbase と共同で設立した CENTRE コンソーシアムを通じて2018 年に USDC を公開しました。

裏付け資産と監査フレームワーク

USDC の価値を支える準備資産は現金および残存期間 90 日未満の米国短期国債で構成され、総額は常に発行残高を上回るよう管理されています。

裏付け資産とは、トークンの価値を保証するために保有する実物資産のことです。
準備金は BNY Mellon など複数の米国銀行に分散保管され、単一行への集中を 20 % 未満に抑える内部ルールが導入されています。

透明性の要となるのが月次アテステーション(第三者保証報告)です。Big Four の Deloitte が SSAE-18 基準で残高を照合し、レポートはCircleのTransparencyページで誰でも閲覧可能です。

監査法人と発行体の間には独立性問題が残るものの、毎月の詳細報告・銀行別残高の開示・SOX404 類似の内部統制レビューという三点セットは、同業の USDT や BUSD より情報量が多いと評価されています。

投資家はレポートの前提条件を精査しつつ、保管先の推移を継続的にウォッチする姿勢が求められます。

価格安定メカニズムの鍵となるリアルタイム償還

USDC は「完全裏付け型 + リアルタイム償還」という在庫方式で 1 USDC = 1 USD を維持します。

ユーザーが Circle 口座へドルを入金するとオンチェーンでトークンがミント(発行)され、償還要求があればトークンをバーン(焼却)してドルが銀行送金される、この一連の流れが 24 時間 365 日 API で自動化されています。

「ミント」と「バーン」は、それぞれトークンを新規発行・消滅させる操作を指します。

2024 年には償還 SLA が「翌銀行営業日」から 最短 2 時間 へ短縮され、スプレッド(手数料)なしで応じる方針が示されました。

オンチェーン市場では、乖離が 0.5 % を超えるとアービトラージ(価格差取引)が機能し、価格が急速に 1 USD へ回帰する仕組みが実証されています。

一方、スマートコントラクトにはブラックリスト機能が備わり、制裁対象アドレスへ送金されたトークンを凍結できます。

コンプライアンス上は利点ですが、大量凍結が起きれば循環供給が減り、市場価格に影響する可能性も指摘されています。この点は安定メカニズムの副作用として覚えておきましょう。

USDCの購入方法

USDCを購入する手段は大きく分けて中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の二系統があります。

CEXのメリットは、法定通貨入金が容易で板が厚いこと、そして初心者でもUIが分かりやすいことです。デメリットは、KYC(本人確認)や出金制限がある点と、取引所自体のリスクを背負う点です。

一方、DEXではウォレット接続だけでUSDCを取引でき、自分の鍵を自分で管理するセルフカストディの安心感があります。ただし、オンチェーン取引ゆえにガス代やスリッページ管理が必要で、スマートコントラクトリスクも伴います。

ウォレット設定と秘密鍵管理のベストプラクティス

ウォレットを初めて使う場合は、12~24 語のシードフレーズ(秘密鍵のバックアップ)を紙に手書きで保管しましょう。

シードフレーズとは、秘密鍵を人間が読み書きできる形に変換した単語列のことです。クラウド保存やスクリーンショットはフィッシング被害の温床になるため厳禁です。

秘密鍵を紛失するとトークンは誰にも回収できません。
セルフカストディの心得として、ハードウェアウォレットでオフライン保管、多段階認証を設定、少額からテスト送金の三点を徹底してください。これだけで大半の事故を防げます。

USDCとUSDTの違いを比較

USDCとUSDTの違いを、以下3つの要点から比較していきます。

USDCとUSDTの違いを比較
  • 準備資産の透明性と公開頻度
  • 規制・凍結リスクと中央集権度
  • 市場流動性・スプレッドと取引コスト

USDTの概要を詳細に知りたい方は、以下の記事をお読みください。

仮想通貨のUSDTとは?基本概要や他のステーブルコインとの違いを解説

準備資産の透明性と公開頻度

USDC は月次で Deloitte のアテステーションを公開し、保管銀行名や米国債の残高まで詳細に示しています。一方 USDT(テザー)は四半期ごとに監査法人の「アグリゲート残高証明」を公表するのみで、資産内訳の粒度が粗い状態です。

スクロールできます
比較項目USDCUSDT
監査頻度月次四半期
監査基準SSAE-18社内基準
銀行別残高公開非公開
国債比率80 %以上非公開

表から分かるように、開示水準の差は歴然です。
透明性を重視する機関投資家は USDC を選好する傾向がありますが、個人投資家が最終的に何を優先するかは用途次第です。

規制・凍結リスクと中央集権度

USDC は NYDFS の BitLicense 取得や FinCEN 登録を済ませ、ブラックリスト機能で制裁要件に対応しています。
これは規制リスクを低減する一方、運営主体が外的圧力を受けた場合でも即座に凍結が可能という中央集権リスクを孕みます。

USDT はブラックリスト機能を備えつつも、テザー社が過去に当局と対立した事例があり、透明性より商業的判断を優先する局面が多いと指摘されています。

中央集権度は両者とも高いものの、「規制順守の意思表示」という観点では USDC の方が強調されています。

市場流動性・スプレッドと取引コスト

取引量では依然として USDT が圧倒的です。特に先物・レバレッジ取引の証拠金としては USDT ペアが標準となっており、滑らかな価格発見と狭いスプレッドが特徴です。

一方、現物市場や法人決済領域では USDC の出来高シェアが拡大中です。

アメリカ企業は規制対応コストを減らすため、「信用度 × 規制順守」を優先し USDC 決済を採用する例が増えています。
ユーザーは「取引手数料」「入出金スピード」「信用リスク」の三要素でどちらが適するか判断するとよいでしょう。

USDCの危険性とリスク管理

USDCに危険性はあるのか解説します。

銀行集中リスクとデペグ事例の教訓

2023 年 3 月、Circle の準備金 8 % に当たる 33 億ドルがシリコンバレー銀行(SVB)に集中していたことが判明し、USDC は一時 0.87 ドルまで下落しました。
参考:The Guardian

72 時間で償還を再開し価格は回復しましたが、預金保険外の残高が即座に価格へ転嫁された初の大型事例として刻まれました。

事件後、Circle は「1 行あたり 20 % 未満」の分散ルールを設定し、週次アテステーションに銀行別残高を追加しています。ユーザー側の教訓は、透明性の高さだけではリスクは消えず、保管先と法的枠組みを監視し続ける必要があるという点です。

ブラックリスト機能による資産凍結の可能性

USDC のスマートコントラクトにはブラックリスト機能が実装されており、制裁対象アドレスや不正流用が疑われるアドレスを Circle が凍結できます。

これは AML/KYC(マネーロンダリング防止・本人確認)を満たす上で不可欠ですが、誤凍結や政治的判断による資産封鎖リスクを伴います。

凍結トークンが大量に発生すると、循環供給が減少し価格上振れ要因となる可能性もあります。利用者は「コンプライアンス上の安心」と「自由度低下」を天秤にかける必要があります。

基盤チェーン停止やスマートコントラクト脆弱性

USDC は Ethereum のほか、Solana・Avalanche・Arbitrum など 15 以上のチェーンでネイティブ発行されています。

Solana が 2022 年に複数回停止した際、USDC 送金が一時滞った事例が報告されました。ステーブルコインは自らチェーンの可用性を保証しないため、基盤の障害がそのまま決済遅延となります。

スマートコントラクトのバグやブリッジの脆弱性も無視できません。Circle は CCTP(バーン&ミント方式)でリザーブ二重化リスクを解消しましたが、ユーザーは利用するチェーンとブリッジのセキュリティ監査状況を確認することが大切です。

USDC保有のメリット

USDC保有のメリット
  • 高い透明性と月次アテステーション
  • Visa・CCTP連携による高速低コスト決済
  • レンディングで利回り収入を獲得できる

高い透明性と月次アテステーション

USDC は準備金内訳と残高を毎月公開し、Deloitte が一致を保証するアテステーションを添付します。これにより、規制順守を重視する機関投資家でも安心して利用できる「見える化されたデジタルドル」として差別化に成功しました。

USDCの強み
  • 全量公開: 米国債銘柄や満期日まで示される
  • 第三者保証: Big Four が SSAE-18 で検証
  • 超過担保: 常に発行残高を上回る準備金

こうした透明性は、従来のオフショア型ステーブルコインでは得にくかった信用をもたらし、銀行口座連携や法人決済で採用が広がっています。

Visa・CCTP連携による高速低コスト決済

2025 年、Visa は VTAP プログラムで USDC のミント・バーン API を公開し、加盟店清算を数分で完了できる仕組みを導入しました。

従来のカード決済は清算に数日を要しましたが、USDC 清算では着金確認がリアルタイムになり、加盟店手数料を数十 bp(ベーシスポイント)単位で圧縮できます。

Circle の CCTP により、ユーザーは最安ガスのチェーンへ USDC をバーン&ミント方式で転送可能です。これにより国際送金や DeFi で「手数料最小化 × 決済速度最大化」という両立が実現しました。

レンディングで利回り収入を獲得できる

仮想通貨レンディングでUSDTをレンディングすることで、利回り収入を獲得できます。

国内レンディングサービスの貸とくなら、年利10%程度の利回りを提供しています。
レンディングは仮想通貨を一定期間預けるので、預けている間に価格変動が発生しても対応しづらいのがデメリットですが、ステーブルコインなら価格変動が基本的にはないためそのデメリットを消すことがあります。

仮想通貨レンディングを始めたい方は、以下の記事で詳しく解説しているのでお読みください。

仮想通貨レンディングとは?メリットやリスク、どれだけ増えるのかを解説!

USDCのデメリット

USDC は裏付け資産が米国短期国債と現金で運用されているにもかかわらず、保有者には利息が一切還元されません。Circle が国債利回り(足元では年率 4 % 前後)を収益として受け取る一方、ユーザーは機会損失を負担する構造です。

米議会で審議中のステーブルコイン法案には「トークン残高への利払いを禁止する」条項が含まれる案もあり、規制面からも利息付与の望みは薄いと見られます。

代替策として、DeFi レンディングや取引所のステーキング商品で USDC を運用し利回りを得る方法がありますが、スマートコントラクト破綻やカストディ破綻のリスクを追加で引き受ける点は否めません。

結果として「安全性を取るか、利回りを取るか」というトレードオフが生じます。

USDCの市場規模と成長動向

USDCの市場規模と成長動向を解説します。

時価総額と流通量の推移

以下に 2021 年以降の主要指標をまとめます。

年月発行残高(億USD)24h 出来高(億USD)年間成長率
2021-1242080+220 %
2022-1257095+35 %
2023-12580110+1.8 %
2025-05610100+5.2 %
参考:CoinMarketCap

表から分かるように、SVB 破綻(2023 年 3 月)で一時発行残高が減少したものの、その後は回復基調にあります。24 時間出来高が安定して 100 億ドル前後を維持している点は、流動性の厚さを示す材料です。

チェーン別発行残高の分布

マルチチェーン展開により、現在は Ethereum 以外にも 15 以上のネットワークでネイティブ USDC が発行されています。

チェーン別発行残高の分布
  • Ethereum: 約 62 %
  • Solana: 約 14 %
  • Arbitrum / Optimism: 合計 10 %
  • Avalanche・Base・その他: 合計 14 %

参考:Circle

この分散は、ガス代の安いチェーンでマイクロペイメントが増えた結果です。

ただし DeFi TVL(Total Value Locked)は依然として Ethereum が最多のため、大口取引やレンディングはメインネットに集中しています。

DeFiエコシステムでの利用拡大

DeFi プロトコル全体で、USDC を片足に含む流動性プールのロック額は約 220 億ドルに達し、USDT を抜いて最大の担保資産となりました。

高い透明性と価格安定が借り手・貸し手双方の信用コストを下げるため、レンディング市場や分散型取引所の基軸通貨として存在感を強めています。

一方、プールがチェーンごとに細分化され流動性が断片化する課題も残ります。Circle の CCTP 経由取引量は四半期ごとに倍増しているものの、完全な資本効率の均一化には時間がかかると見られます。

USDCについてよくある質問

USDCについてよくある質問
  • 償還完了までの時間は?
  • Circle が破綻した場合の影響は?
  • 保有者に利息は付く?
  • USDCを日本円にする方法は?

償還完了までの時間は?

Circle の公式 SLA は「銀行営業日 2 時間以内」です。入金確認→ミントや、USDC 送付→ドル払い戻しが API で自動化されており、オンチェーン手数料以外の追加コストは発生しません。

Circle が破綻した場合の影響は?

準備資産は信託構造で分別保管されているため、Circle の債権者が直接差し押さえることはできません。ただし清算手続きが完了するまで償還が停止するリスクは避けられず、価格乖離が長期化する可能性があります。

保有者に利息は付く?

現行モデルでは付与されません。

利回りを獲得したい場合は、レンディング業者にレンディングしたりDeFiで運用したりすることが必要になります。

仮想通貨レンディングとは?メリットやリスク、どれだけ増えるのかを解説!

USDCを日本円にする方法は?

USDTを日本円にする方法としては、BybitなどでUSDT→BTC/ETHに替え、国内取引所へ送金してJPYに現金化するルートが一般的です。

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