ビットコイン投資を検討するとき、必ず耳にするキーワードが「半減期(Halving)」です。
「新規発行量が定期的に半分になる」この一文だけでも希少性が高まるイメージは湧きますが、実際の仕組みや価格への影響はもう少し複雑です。
本記事では、歴代イベントの振り返りから価格メカニズム、2025年以降の展望までを論理的に整理しつつ具体例も交えながら解説します。まずは半減期の基本と年表から見ていきましょう。
ビットコインの半減期とは?わかりやすく仕組みを解説
ビットコインの半減期とは、マイナー(採掘者)に支払われるブロック報酬が21万ブロックごとに半分になるイベントです。半減期を迎えるごとに市場へ流れ込む新規ビットコインが50%ずつ減るため、通貨全体のインフレ率が指数関数的に低下します。
マイナーとは、ビットコインのクライアントを運用し、ビットコインにおけるブロックを新しく作る、マイニングを行っている人や機械のことです。
最初のブロック報酬は50BTCでしたが、2012年に25BTC、2016年に12.5BTC、2020年に6.25BTC、そして2024年4月20日に3.125BTCへ減少しました。
このプロセスは2100万枚の上限に滑らかに近づくための「減速装置」と位置づけられています。
半減期が決まるタイミングはブロック高によってのみ制御され、約3年10カ月〜4年強で到来します。コードにハードコードされているため、人為的に変更することは極めて困難であり、この“自動金融政策”こそがビットコインの分散性と信頼性を裏打ちしています。
ビットコインの半減期歴代イベントを年表で確認
半減期ごとに何が起きたのかを俯瞰すると、価格トレンドの大枠と市場心理の変遷が見えてきます。以下に主要データをまとめます。
回数 | 日時(UTC) | ブロック高 | 報酬(BTC→BTC) | 直後1年リターン* | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
第1回 | 2012-11-28 | 210,000 | 50→25 | +8,000% | 時価総額100億ドル未満 |
第2回 | 2016-07-09 | 420,000 | 25→12.5 | +300% | 大手取引所拡大期 |
第3回 | 2020-05-11 | 630,000 | 12.5→6.25 | +600% | コロナ後の機関参入 |
第4回 | 2024-04-20 | 840,000 | 6.25→3.125 | 未確定 | ETF資金流入期 |
上表のとおり、回を追うごとに価格変動幅は縮小傾向にありますが、依然として株式やコモディティに比べ突出したパフォーマンスを示しています。
ビットコインの半減期はいつ?直近と今後の予定
直近の第4回半減期は2024年4月20日(日本時間21日早朝)に到来しました。次回、第5回はブロック高1,050,000で発生するため、2028年前半が目安とされています。
- 2024年4月20日:第4回達成(報酬3.125BTC)
- 2028年春頃:第5回見込み(報酬1.5625BTC)
- 2032年後半:第6回見込み(報酬0.78125BTC)
各回の正確な日時はネットワークのハッシュレート(採掘速度)変動によって前後するため、「予定」はあくまで目安です
2024年の半減期はブロック840,000到達時点で起こりました。日本時間では4月21日午前2時過ぎ、米国東部時間では4月20日午後1時台でした。オンチェーン手数料が急騰し、一時的にトランザクション詰まりが発生した点が過去回との大きな相違点です。
イベント後6週間で価格は約20%調整しましたが、その後ETFフローの回復と米インフレ鈍化で7万ドル台へ戻しています。
ビットコインの半減期を見据えた上での今後の動向分析は以下の記事で解説しています。
ビットコイン(BTC)の今後はどうなる?2025年最新の現状・価格動向と将来性を解説
ビットコインの半減期はいつまで続く?上限到達のロードマップ
半減イベントはおおむね2140年頃まで続くと推計されています。2100万枚の上限に到達するまでは、報酬が理論上ゼロになるまでおよそ30回以上の半減を経る計算です。
- 2140年頃:理論上の最後の新規BTC発行
- 各半減で年間インフレ率は逓減し、2036年以降は0.2%未満へ
- 報酬構成はブロック報酬→手数料収入のみへ
この長期設計により、ビットコインは“デジタルゴールド”と呼ばれるほど高いストック・フロー比率(既存供給を年間供給で割った指標)を実現します。同指標が金を上回るタイミングは2030年代半ばと予想されています。
なぜビットコインの半減期に価格は上がるのか?
なぜビットコインの半減期で価格が上がるのか、価格上昇の根拠は大きく「供給ショック」と「期待心理」の二つです。
半減期で新規供給が減ること自体は需給バランスを逼迫させますが、イベントが周知されるにつれ投資家が事前に買い集める“織り込み効果”も働きます。
供給面だけに注目すると「希少性強化→価格上昇」がシンプルな図式ですが、実際には利上げ・景気後退・規制報道など需要側の変数が短期価格に大きく影響します。
J.P.モルガンが2024年春に「6万ドル超は割高」と警戒を示した例が象徴的です。
一方、マイナーの売却圧力が報酬半減で弱まる点は需給の下支え要因です。過去のデータでは、半減期後6〜12カ月間はマイナーのネット売却量が平均30%縮小しており、これが中長期の上昇フェーズを招く温床になっています。
ビットコインの半減期チャートで読み解く半減期前後の値動き
以下は半減期を表示した価格のデータです。ビットコインの最高価格更新のタイミングは、基本的に半減期が来てから1~2年ごろによく起きているように見えますね。

以下に半減期±12カ月のパフォーマンス傾向をまとめます。数字は月末終値ベースの平均騰落率です。
半減期タイミングからの期間 | -12~-6カ月 | -6~0カ月 | 0~+6カ月 | +6~+12カ月 |
---|---|---|---|---|
騰落率 | +45% | +60% | -10% | +120% |
過去3回平均では、半減期前半年で上昇→イベント直後に調整→半年後以降に大幅上昇という“逆V字”が繰り返されています。ただし標準偏差が大きく、2024年は調整幅が比較的小さい点が特徴です。
また日次ボラティリティはイベント当月に平均35%拡大しました。価格の変動幅が大きいほどリスク管理が重要になるため、現物+デリバティブ併用でのヘッジ戦略を検討する投資家が増えています。
ビットコインの半減期で売るタイミングをどう見極める?
ビットコインの半減期で売るタイミングは永遠の課題ですが、半減期サイクルに沿ったシナリオ設計が参考になります。
- イベント1年前から半年かけて分散買い
- イベント前月〜当月にかけて部分的な利確
- 半減期後3〜6カ月の調整局面で買い増し、1年後に再度利確
バックテストでは上記サイクルがリスク調整後リターンを最大化しましたが、機関投資家の比率が上がるにつれ優位性は縮小傾向にあります。
ドルコスト平均法を併用し、余剰資金での長期保有と短期トレードを分離することで心理的負荷を軽減できます。
デリバティブ市場のベーシス(先物価格−現物価格)が拡大する局面では、先物ショート×現物ロングのキャリー取引で年率5~10%のイールドを狙える場合もあります。ただし清算リスクに備え、レバレッジは最低限にとどめることが肝要です。
2025年のビットコイン半減期の影響を読む
2025年は第4回半減期の“後半戦”に位置づけられ、過去パターンでは上昇フェーズが続く可能性が高い時期です。
ETF経由の資金流入、米利下げ開始、アジア機関投資家の参入が重なれば、需給タイト化が一段と進むシナリオが想定されます。
実際に、2025年6月末にビットコインは大幅更新ではないですが最高価格をつけています。
しかし同年には米大統領選や欧州の暗号資産規制強化議論も控えています。特にエネルギーコストと環境規制はマイナー収益に直結するため、ハッシュレートの伸び悩みがセキュリティ懸念を誘発するリスクも無視できません。
したがって2025年の投資戦略は「強気ベース・下値警戒」を基本とし、マクロ指標(利下げペース、インフレ率)と規制ヘッドラインをトリガーにリバランスを行う柔軟性が求められます。
規制とマクロ環境が半減期相場に与える影響
半減期単体の供給ショックよりも、規制と金融政策のヘッドラインが価格を大きく揺さぶるという話が最近は多いですが、これは2024年の値動きが物語っています。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始時期や米国現物ETFの資金流入ペースが市場センチメントを左右し、1日で1,000ドル以上動く場面も珍しくありませんでした。
マクロ環境が好転すると、半減期後のタイトな供給がレバレッジを利かせて上値を押し上げる一方、景気後退やリスクオフ局面では需給改善効果が相殺されるケースもあります。
ゆえに「半減期=必ず強気」と短絡的に決めつけず、金利・為替・株式の動向を俯瞰しながら相関変化に備える姿勢が重要です。
ビットコインの半減期までのカウントダウンを活用してリスクを管理
半減期の正確な日時はハッシュレートに依存するため、日数ベースでの予測はほぼできません。
とはいえ、カウントダウンサイトやウォジェットを活用すれば、おおよそのタイムウインドウは把握できます。
- 半減期6カ月前:設備投資や資金配分を検討
- 半減期1カ月前:ポジションの含み益・含み損を集計し、利確条件と損切り条件を設定
- 半減期当月:手数料高騰や価格急変への備えとして、リスク制限や証拠金維持率を再点検
特にレバレッジ取引を行う場合、イベント前後の強制清算リスクは平常時より高まります。カウントダウンを“デッドライン”として逆指値の再設定や証拠金追加のリマインダーを入れておくと、感情的な判断を避けやすくなります。
ビットコインの半減期についてよくある質問
価格の4年サイクル説は今後も続く?
価格の4年サイクル説は「半減期→1年以内に強気相場→2年目以降に調整→次の半減期へ」という循環モデルです。
過去3回は概ね当てはまりましたが、2024年以降は機関投資家参加率が上がり、市場効率性が高まっています。
これにより事前織り込みが進む可能性があり、サイクルは“ゆるやかな上昇トレンド+短期スパイク”型へ変質するとの見方も出ています。
ビットコインを買うのは今からだと遅いのか?については以下の記事で解説しています。
ビットコインは今からだと遅い?最新の相場状況から間に合うのか徹底解説
半減期後に価格が下がることはある?
半減期後に価格が下がることはあります。事実、第2回・第3回ともにイベント後3~6カ月で20~30%の調整が発生しました。
材料出尽くし感に加え、マイナーや短期トレーダーが利確に動くためです。
よって長期投資でも、半減直後のボラティリティ拡大を想定し、余剰資金で段階的に買い増すか、イベント前に部分利確してリスクを減らす戦略が推奨されます。
半減期は他の暗号資産にもある?
半減期はビットコイン以外の銘柄にもありますが、ビットコインほど価格インパクトが大きいとは限りません。
ライトコインやビットコインキャッシュにも半減イベントがありますが、規模が小さいため短期投機色が強く、長期上昇へつながりにくい傾向があります。
イーサリアムはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)移行とバーン機構で供給が動的に減少する“擬似半減”が起きるものの、固定スケジュールではなく、ビットコインの減速装置とは性質が異なります。