マイニングは儲からないって本当?2025年最新状況と今後の見通しを解説

マイニング 儲からない

仮想通貨のマイニングは「電気代を安くしてパソコンを動かせばお金が増える」というイメージで語られがちですが、2025年の収益環境は劇的に変化しています。

本記事では、マイニングの直近の日次報酬や難易度の動向を解説し、「なぜ今マイニングが儲からないのか」を解説します。読後には、マイニング参入を迷っている読者が現実的な損益ラインとリスクを把握し、自ら判断できることを目指します。

目次

マイニングは儲からないって本当?

マイニングは儲からないと言われがちですが、個人規模でのマイニングは儲かりません。

例えばビットコインでは半減期を経た現在、ブロック報酬は3.125 BTCに減少し、難易度は過去最高圏で張り付いています。ここではまず「儲からない」と言われる背景をデータで確認します。

【2025年最新】マイニング報酬と難易度の推移

1 日あたりのマイナー全体収入は約2,000万ドル前後で横ばいが続いています。難易度はハッシュレート増強に合わせて四半期ごとに数%ずつ上昇し、2025年6月時点でも最高圏を維持しています。

その結果、同じASICを動かしても得られるビットコイン量は年初来で15 %近く減少しました。
さらに損益分岐となる電力単価は0.05 $/kWh未満とされ、家庭用契約が0.25 $/kWhに達する地域では「掘れば掘るほど赤字」になりやすい状況です。

難易度と報酬の関係をまとめると、難易度が上がるほど1 TH/sあたりの採掘量は減少し、報酬が半減するたびに必要ハッシュレートは理論上2倍以上に跳ね上がります。
今回の半減期で報酬は半減した一方、難易度はむしろ上昇しているため、利益圧縮がダブルで効いているわけです。

一方で、取引手数料が急騰した短期間だけは収益が一時的に跳ね上がります。しかし平均化するとブロック報酬減を補うほどではなく、長期的には「手数料頼み」は成立していません。

半減期後の市場環境の変化

ビットコインの半減期は4年に一度ブロック報酬を50 %削減します。
2020年と2024年を比較すると、難易度とハッシュレートは約3倍に拡大し、同一消費電力で得られるBTC量は6分の1以下に落ち込みました。

過去2回の半減期では12〜18 か月後にビットコイン価格が上昇し、採算ラインが緩和される傾向がありましたが、今回は生成AI需要の急増が並行し電力価格を押し上げています。

ビットコインの半減期とは?なぜ価格が上がるのか、どう投資すれば儲かるか解説

AIデータセンターとマイニングファームが電力を奪い合う構図が強まり、価格上昇メリットを相殺するリスクがある点が従来と異なります。

また、大規模マイナーは最新ASICを大量導入し、流動的な電力契約でコストを抑えていますが、資金力のない個人や中小は更新が遅れ、撤退圧力を受けています。

ASIC(エーシック)は Application Specific Integrated Circuit の略称で、ハッシュ計算だけを高速・低電力で行うよう最適化された専用チップのことです。

この設備投資ギャップこそが「儲かる人と儲からない人」を分ける最大の要因になりつつあります。

マイニングが儲からない理由

マイニングが儲からない理由は以下の通りです。

マイニングが儲からない理由
  • 電力コスト高騰で損益分岐点が跳ね上がる
  • 初期投資額が高く収益性が悪い
  • 取引手数料は大きな収益にならない
  • 規制リスクがある

電力コスト高騰で損益分岐点が跳ね上がる

米国・日本など先進国では2024年後半から電気料金が前年比数%〜30 %上昇し、0.25 $/kWh前後が一般的になりました。ビットコインマイニングの損益分岐点が0.05 $/kWh未満である以上、この時点で多くの家庭用契約は赤字確定です。

電気料金を下げる策として深夜割引や自家太陽光がありますが、深夜プランは時間帯が限られ、日中停止すると機器の償却期間が伸びます。
太陽光は設備費が大きく、天候変動による稼働率低下がROIを悪化させるため、単体では解決策になりません。

以下に電力単価ごとの損益分岐を示します。

スクロールできます
電力単価 ($/kWh)損益判定 (最新ASIC)損益判定 (旧世代ASIC)
≤0.02黒字余地ありやや黒字
0.03–0.05収支トントン赤字
≥0.06赤字深赤字

表からわかるように、電力単価0.05 $/kWhが事実上の境目で、旧世代ASICでは0.02 $/kWhを下回らない限り黒字になりません。

初期投資額が高く収益性が悪い

マイニング設備の最新モデルAntminer S21 Proは15 J/THと高効率ですが、本体4,000ドル前後と高価格です。
個人が数台導入すると初期投資は1万ドルを軽く超え、投資回収期間は24〜36 か月に伸びがちです。

中古機は安く入手できますが、電力効率が30 J/TH前後と劣るため、電力コストが0.05 $/kWhを超える地域ではかえって赤字幅が拡大します。

マイニングが儲からない3要素
  • 新品ASICは高価格
  • 中古ASICは低効率
  • マイニングの難度は上昇

上記3要素は悪循環を形成し、投資を先送りするほど難易度上昇でさらに初期投資分を回収できるまで延びる構造になっています。

取引手数料は大きな収益にならない

2024年半減期後、NFT等が話題になると、手数料がブロック報酬の40 %を超える場面もありました。しかしピークは数日〜数週間で終わり、平常時の手数料収入は報酬減を埋め切れません。

手数料の乱高下は損益予測を難しくし、ソロマイナーや小規模プールは高手数料期にハッシュを集中させるため、平準化の恩恵が乏しいのも問題です。

結局、手数料依存モデルは長期的な安定収益の拠り所にはならず、「長く掘るほど儲かる」という従来の前提が崩れています。

規制リスクがある

電力不足や環境負荷の議論を背景に、主要マイニング拠点では課税や上限規制が相次いでいます。
米国テキサスでは需要急増に伴い料金割引が縮小し、カザフスタンでは電力課税とハッシュ上限が導入されました。

政策は一夜で変わるため、許認可に頼るビジネスモデルは先行きが不透明です。個人マイナーは地政学リスクをヘッジしにくく、撤退コストも回収できないケースが多いのが実情です。

日本でも今後米国のような規制リスクが大きくなる可能性は0ではありません。

現在の個人マイニングの利益はどう変化している?

個人マイニングの目線で利益がどう動いているかを、解説します。

損益分岐点

最新ASICの消費電力はおおむね15 J/THです。例えば234 TH/s機を動かすと、消費電力は約3.5 kWになります。1 日あたりの電力コストは次の式で求まります。

3.5 kW × 24 h × 電力単価

電力単価0.05 $/kWhなら1 日4.2 ドル、月約126 ドル。一方、現在1 TH/sが稼げるBTCは難易度と為替を勘案して1 日0.0000024 BTC前後、ドル換算で約0.15 ドルです。

234 TH/sなら1 日35 ドル強の収入となり、電力費差し引きの粗利は約31 ドル。

しかし電力単価が0.10 $/kWhに上がれば電力費は倍になり、粗利は3 ドルに激減します。0.25 $/kWhでは赤字に転落し、稼働させるほど損失が膨らみます。

中古ASICと最新機の収益性の比較

最新S21 Proを4,000ドルで購入し、粗利を月930 ドル(電力0.02 $/kWh想定)とすると、単純計算でROI(投資利益率)は約4.3 か月ですが、電力0.05 $/kWhでは粗利が月300 ドル弱まで低下し、ROIは13〜14 か月に延びます。

ROIとは、ある投資に対してどれだけの利益が得られたのかを示す指標です。

一方、7 nm世代の中古ASICは1 台500ドル以下で手に入りますが、電力効率が悪いため電力0.05 $/kWhだと月20 ドル前後の赤字になります。
ROIを計算するまでもなく、電力が安くない限り稼働メリットはありません。

個人がマイニングで利益を出すには
  • 最新機 × 安価電力
  • 中古機 × 極低電力
  • 高電力単価 × いずれの機種も赤字

個人が黒字を狙うには「最新機と極端に安い電力」を同時に確保する以外に道がなく、参入障壁が著しく高まっていると言えます。

個人がマイニング利益を最大化するには?

個人がマイニング利益を最大化するには、「電力をどう安く調達するか」が最も重要になります。
ここではコストを抑える2つのアプローチを紹介します。

再生可能エネルギーの活用

0.02 $/kWhを下回る水力・風力地域は南米やアフリカの一部、米国ではアイダホ州やワシントン州の水力発電地帯が代表例です。
とはいえ居住地が限定されるため、多くの個人は再生可能エネルギーを活用したモデルがよいでしょう。

再生可能エネルギーの活用方法
  • 小規模水力直結
  • ソーラー+蓄電池
  • ガスフレア削減電源

上記モデルは電力単価0.01 $/kWh以下を狙えますが、初期投資が数万〜数十万ドルに及び、個人単独での実現は難度が高いのが実情です。

需要応答契約でマイニングを止める最適タイミング

米国テキサスなどでは電力不足時に負荷を停止して報酬を得る「需要応答(DR)」契約があります。

マイニングは瞬時に停止・再開できるためDRと相性が良く、ピークシフト報酬で電力単価を実質0.03 $/kWhまで引き下げた事例も報告されています。

ただし、DR報酬は発動回数が不確定で、ピーク停止が頻発すると採掘時間が削られROIが伸びるリスクがあります。停止ラインを「卸電力価格がX $/MWhを超えたら」と機械的に設定し、計画停止で電力費を抑えるのが現実的な運用術です。

ビットコインマイニングで個人が赤字になる原因は?

ビットコインマイニングで個人が赤字になる原因を、シミュレーションを通して解説します。

ビットコインマイニングで赤字になるときのシミュレーション

まず赤字幅を具体的に把握するために、家庭用契約で一般的な0.25 $/kWhを前提にシミュレーションを行います。

想定機種はAntminer S21 Pro(234 TH/s、15 J/TH)です。

消費電力は約3.5 kWとなり、1 日の電力費は21 ドル、月額で約630 ドルに達します。
一方、2025年6月時点の1 TH/sあたり日次採掘量は0.0000024 BTC前後、ドル換算で約0.15 ドルで、234 TH/sでも日次収入はわずか35 ドル程度です。
結果、毎日約-14 ドルの赤字が発生し、1 年続ければ5,000 ドル超の損失になります。

この赤字構造は難易度調整が行われても大きくは変わりません。難易度が仮に10 %低下しても採掘量は約10 %増えるだけで、赤字が-12 ドルになるにすぎません。

逆にビットコイン価格が2倍になれば黒字転換し得ますが、その頃には難易度も上昇している可能性が高く、極めて不確実です。

さらに家庭用電気料金はピーク帯課金が導入されつつあり、従来より単価が跳ね上がるリスクがあります。

稼働時間を夜間に限定すれば電力費は抑えられますが、稼働率が下がるため機器償却が長期化し、結局赤字が改善しない点が厄介です。

初期投資と金利負担の落とし穴

個人が最新ASICをローンやクレジット分割で購入すると、金利負担がROIを大幅に引き延ばします。

たとえば4,000 ドルを年率10 %で24 か月返済すると、利息総額は約440 ドルになります。これは低利益環境では致命的な追加コストです。

また、中古ASICを500 ドルで買っても、付帯設備(200 V専用配線・ブレーカー・吸排気ダクト・ノイズ対策フィルター)で追加300 ドル、さらに防音ボックスや夏季冷却のためのエアコン強化で数百ドルが上乗せされることが多々あります。

購入前に「本体価格+周辺設備+金利」のトータルで採算を見積もらなければ、“安物買いの赤字掘り” になりかねません。

最新マイニング報酬と今後の見通し

最新のマイニング報酬などの現状から、今後マイニングビジネスがどのように変化射ていくのか考察します。

2025年の日次報酬推移と難易度見通し

直近1年の日次マイナー収入は2,000万〜2,600万ドルのレンジで推移し、半減期直後の手数料バブルを除けば目立った回復は見られません。
難易度は2025年6月時点でピークからわずかに調整したものの、前年同月比では約18 %上昇しています。

開発者コミュニティ内では「手数料シェアの割合を増やし、ハッシュ維持インセンティブを高めるべき」との議論がありますが、合意形成には時間がかかり、2026年中に抜本策が実装される見込みは薄いのが現状です。

難易度の将来見通しは「ビットコイン価格と電力単価のどちらが先に限界を迎えるか」に左右されます。

価格が急騰すれば過去と同様に難易度が追随し、逆に価格が停滞すると高電力単価地域からマイナーが撤退し難易度が下がる、このチキンレース型サイクルが続くと考えられます。

大規模マイナーは収益方法を広げている

大規模マイナーが実践している収益多角化モデルを紹介します。

大規模マイナーの収益化方法
  • 熱回収
  • 需要応答報酬
  • AI/HPCリソース転用
  • 再エネ証書販売

熱回収はマイニング機器の排熱をハウス栽培や地域暖房に利用し、電力費を実質20 %前後圧縮する事例が報告されています。

需要応答報酬はピーク時に負荷を停止し、系統運営者からインセンティブを得る仕組みです。
得られる報酬は地域差が大きいものの、実質電力単価を0.03 $/kWh程度まで下げられる場合があります。

AIやHPCリソースへの転用は、計算能力をAI推論や高性能計算に一部割り当て、時間帯で切り替えるハイブリッド施設が登場しています。ただし冷却・電力変動対策の追加CAPEXが必要です。

再エネ証書販売は再生可能エネルギー証書(REC)を発行し、環境価値を売却することでマージンを積み増すモデルです

REC市場価格はボラティリティが高く、長期安定収益とは言い切れませんが、キャッシュを得られる利点があります。

個人レベルでこれらをフル活用するのは難しいものの、小規模ソーラー+DR+熱回収 の組み合わせで電力費を50 %削減した成功例もあります。

もっとも、初期投資が数千〜1万ドル単位で増えるため、「投資回収まで掘り続けられるか」が最大の関門となります。

マイニングは儲からない?についてよくある質問

マイニングは儲からない?についてよくある質問
  • 低リスクで儲かる他の運用方法はある?
  • 規制リスクにどう備える?

低リスクで儲かる他の運用方法はある?

今から個人でマイニングを始めて儲けるのはかなり厳しいですが、低リスク運用の1つにレンディングがあります。

レンディングとは、自分の持っている暗号資産を貸し出してその貸出利息で儲ける暗号資産の運用方法です。
取引所が貸暗号資産サービスとしてやっているほか、レンディングを専門に行う業者も存在します。

購入したビットコインをレンディングサービスに預けることで、業者によっては最大で年利10%ほどの利益が得られます。
ビットコイン以外にも預けられ、価格変動がほぼない銘柄を預けて運用もできます。

仮想通貨のレンディングについての詳しい説明や始め方は以下の記事で解説しています。

仮想通貨レンディングとは?メリットやリスク、どれだけ増えるのかを解説!

規制リスクにどう備える?

規制は国・地域ごとに流動的です。個人ができる最善の策は、契約電力を“可搬化” すること――すなわち機器を素早く搬出入できる環境を整え、税制変更や電力課税強化が報じられたら速やかに撤退できる態勢を取ることです。また複数国に分散する「ジオヘッジ」は理想的ですが、輸送費と関税が重く、現実には雲行きの怪しい地域から早期撤退する機動力のほうが重要になります。

補足として、電力課税やASIC輸入規制は議会審議や官報告示で予告されるケースが多いので、業界ニュースと官報サイトを定期チェックする習慣をつけましょう。日本に居ながら海外ホスティングを使う場合は、その国の電力庁・税務当局のリリースをウォッチすることが不可欠です。

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